2012年5月22日火曜日

【レポート】シンポジウム「多文化共生」論を問い直す―在日コリアンの視点から―

遅くなりましたが、4月22日に開催されたシンポジウム<「多文化共生」論を問い直す―在日コリアンの視点から―>のレポートです!

当日、会場にはUSMのブース企画として「南北コリアと日本のともだち展」より南北コリア、そして日本のこどもたちが描いた絵を展示しました。とても好評の企画でした。




当日は雨が降り、参加者が少なくなるかと心配しましたが、約70人もの参加者があり、大盛況のシンポジウムになりました。




まず、在日本朝鮮人人権協会の金東鶴さんが「朝鮮学校の歴史と民族教育の歴史」というテーマの報告において、朝鮮人の権利としての民族教育がどのように日本において位置づけられてきたか歴史的に検証し、日本の問題を浮かびあがらせました。




次に、獨協大学の非常勤講師である金泰植さんが「『相互理解の場』としての朝鮮学校のために」というテーマで報告。内容については、金泰植さん本人のブログでアップされていますので、こちらをぜひご覧下さい。
http://d.hatena.ne.jp/ktaesik/searchdiary?word=%2A%5B%BA%DF%C6%FC%C4%AB%C1%AF%BF%CD%5D(ブログ「泰然自若~ある大学非常勤講師の備忘録」)




次に、沖縄から日帰りでシンポジウムにかけつけてくれた琉球大学の野入直美さんは、アメラジアンスクールにおける実践を紹介。ここでは、日本社会の排他性が浮かび上がってくると同時に、朝鮮学校の歴史的な実践が、アメラジアンスクールなどマイノリティ教育にどれだけ意義のある実践だったかということが見えてきました。




2部のパネルディスカッションでは、愛知県立大学の山本かほりさん、名古屋大学の浮葉正親さんの司会によるパネルディスカッションを行い、会場の参加者とも議論を重ねました。特に、「多文化共生」と言う言葉がもつ「空虚さ」、そして運動実践につなげる困難さについて多く意見が交わされました。




そして、わたしたちUSMの紹介も行ないました。
引き続きメンバー募集中!!(切実)






最後に、今回のシンポ参加者の感想を、一部紹介したいと思います。




●「多文化共生」論から現在在日朝鮮人を取り巻く差別と排除を考える上で、また日本におけるマイノリティのアイデンティティ構築のための教育をテーマに考える上で、今日のシンポはとても刺激になった。
「多文化共生」の実践の上でのジレンマのような問題点、「多文化は日本の“国益”になる」や、マジョリティの寛容さに頼ったまま、支配的な関係を維持したままの、ある意味マジョリティや国家機関にとって都合良く耳障りのいい言説をマイノリティを支援する側が使わなきゃいけないということを知ることができた。そして自分自身もマジョリティに説明するときに似たようなことをしていることに気づかされ、深く反省する契機となった。
 その意味で金泰植さんの多文化共生といわゆる財界のいう“国益”は関係ないし、ことさらにマイノリティの子どもたちの“素晴らしさ”や“健気さ”を売りにする活動や支援運動に疑問を持てるようになった。刺激的な言葉に感謝したい。(無記名)


   公立学校が今の形のままでは多文化社会に対応していくことができない。実際に対応しきれない部分があらわになり、様々なところで破綻をきたしてきている。金東鶴先生のコメントにも「自分が何者であるのか、日本の学校では対応できない」との話もあった。
 朝鮮学校やブラジル学校様々なエスニックスクールという選択肢は自分が何者であるのか子どもが自分のアイデンティティを確立していく課程の中ではポジティブな効果があることだろう。アメラジアンスクールも然りだと思う。
 自分は公立学校で日本語教室を運営しているが確かに子どものアイデンティティは大きな問題であると思う。様々な国から外国につながる児童、生徒が来日する中、すべての国のためのエスニックスクールを作っていくことは現実的に難しい。そのため、少しずつでも公立学校が変わっていかなければならないと思う。(公立中学教員)




「とても興味深い内容ですが、だた『起承転結』の『起』の部分だけなのが残念。問題提起のみで解決等は何もない」という厳しい意見もありましたが、その意見をしっかりと受け止め、具体的な実践を展開していけるよう、USMはこれからもがんばっていきます!